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あさりする時ぞわびしき人知れず
難波の浦にすまふ我が身は

歌の意味
餌をあさって浜辺に出る時こそつらいものだ。人知れず難波の浦に住む我が身にとっては。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 941

詞書「いと忍びて詣で来たりける男を、制しける人ありけり、罵りければ、帰りまかりてつかはしける」
 あさりに出る時こそつらい、人知れず難波の浦に住む我が身は、と詠んだ歌である。浜辺で餌をあさる鳥や海人に、人目を忍んで女のもとを訪ねる自分を重ね、見つかって追い返されたつらさを詠んでいる。
 詞書によれば、ひそかに通って来た男を制止する人がいて騒ぎ立てたので、男が帰ってから送った歌である。難波の浦は本巻の第九百四十三首、第九百六十首でも詠まれている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「あさりする」は、餌をあさる、の意で、女のもとを訪ねることをたとえている。
 二句「時ぞわびしき」は、その時こそつらい、の意で、「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「わびしき」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
 三句「人知れず」は、人に知られずに、の意で、忍ぶ恋であることを示している。
 四句「難波の浦に」は、難波の浦に、の意で、摂津の歌枕である。
 結句「すまふ我が身は」は、住んでいる我が身は、の意で、「すまふ」に「住まふ」と、抗う意の「争ふ(すまふ)」を響かせ、制止する人に抗ったことを含ませているとみられる。

あさる:餌や魚介を探し求める
なには:摂津国の地名、難波
すまふ:「住まふ」に、抗う意の「争ふ(すまふ)」を響かせる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
年を経て生けるかひなき我が身をば 何かは人にありと知られん
次の歌
ながめつつ人待つ宵の呼子鳥 いづ方へとか行き帰るらむ