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おのが妻恋ひつつ鳴くや五月闇
神奈備山の山時鳥

歌の意味
自分の妻を恋い慕いながら鳴いているのだろうか。五月闇の中、神奈備山の山時鳥は。
鑑賞
巻第三 夏歌 194

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 前歌に続き、時鳥の声を詠む。ただしこちらは鳴く理由を妻を恋う心に求めており、鳥に人の情を重ねている。原文では詞書も作者名も改めて記されていない。
 作者は前歌に続いて「よみ人しらず」であり、人名は伝わっていない。
 場面は五月雨のころの闇夜、場所は神奈備山である。第百六十一首の厚見王歌に詠まれた神奈備川と同じ地に関わる。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「おのが妻」は、自分の妻、の意である。「おのが」は巻第二の第百六十六首の貫之歌にも用いられた語である。
 二句「恋ひつつ鳴くや」の「つつ」は継続を表し、「や」は疑問の係助詞である。鳴き続けているのは妻を恋うためか、と原因を推し量る。巻第一の第百九首で鴬の声に人の言葉を読み取ったのと同じく、鳥の声に理由を与える型である。
 三句「五月闇」は五月雨のころの、月の見えない暗さをいう。前歌が月夜であったのに対し、この歌は闇夜であり、二首が明暗で対をなす。
 四句「神奈備山の」で場所が定まる。「神奈備」は神が宿るとされた山をいう。
 結句「山時鳥」は体言止めである。「山」を冠することで、里へ下る前の、山にいる時鳥であることが示される。姿の見えない闇の中で声だけが聞こえるという設定は、第百九十首以来の一連に通じる。

おのが:自分自身の
さつきやみ:五月雨のころの、月の見えない暗さ
かむなび:神が宿るとされた山
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
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