明け暮らし守るたのみを刈らせつつ
袂そほつの身とぞなりぬる
- 歌の意味
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朝から晩まで見守ってきた田の実を他人に刈らせてしまって、頼みとしていた人を奪われ、袂も涙に濡れる案山子のような身になってしまった。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌上 268
詞書「二人の男に物言ひける女の、一人につきにければ、今一人がつかはしける」
朝から晩まで見守ってきた田の実を他人に刈り取られ、袂も涙に濡れる案山子のような身になってしまったと詠んだ歌である。思いを寄せていた女を他の男に奪われた悲しみを、田を守る案山子にたとえて表している。
詞書によれば、二人の男に言い寄られていた女が、そのうちの一人と結ばれたので、もう一人の男が送ったものである。次歌は女の返歌で、二首は贈答をなしている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書から、女を得られなかった男の歌であることがわかる。
初句「明け暮らし」は、夜を明かし日を暮らして、朝から晩まで、の意である。
二句「守るたのみを」の「たのみ」は、稲の実である「田の実」と、頼りにする意の「頼み」を掛けた掛詞である。見守ってきた田の実を、頼みとしてきた女を、の意である。
三句「刈らせつつ」は、他人に刈らせて、の意で、女を他の男に取られたことを表している。「刈る」は「田の実」の縁語である。
四句「袂そほつの」の「そほつ」は、案山子を表す「そほづ」と、雨や涙に濡れる意の「そほつ」を掛けた掛詞である。
結句「身とぞなりぬる」は、身になってしまった、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「ぬる」が係り結びをなしている。
たのみ:稲の実である「田の実」と、頼りにする意の「頼み」を掛ける
そほつ:案山子を表す「そほづ」と、濡れる意の「そほつ」を掛ける
ものいふ:言い寄る、恋の言葉を交わす
つく:身を寄せる、従う
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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ほには出でぬいかにかせまし花すすき 身を秋風に捨てや果ててん
- 次の歌
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心もて生ふる山田のひつぢ穂は 君守らねど刈る人もなし