露ばかり頼むることもなきものを
あやしや何に思ひおきけん
- 歌の意味
-
露ほども頼みに思わせたことなどないのに、不思議なことだ。何をもとに、露が置くように思いを置いたのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 690
詞書「返し」
露ほども頼みに思わせたことなどないのに、何をもとに思いを置いたのか不思議だと切り返す歌である。詞書から、前歌の第六百八十九首への返しとわかる。前歌の「露ばかり頼めし」をそのまま「露ばかり頼むることもなき」と打ち消し、「おき」に露が「置き」と思いを「置き」を掛けて、約束などした覚えはないと、相手の思い込みをかわしている。
初句「露ばかり」は、露ほども、の意で、前歌の第六百八十九首の初句と同じ句である。
二句「頼むることも」は、頼みに思わせることも、の意で、前歌の二句「頼めしほどの」を受けている。
三句「なきものを」は、ないのに、の意で、「ものを」は逆接を表す。
四句「あやしや何に」は、不思議なことだ、何をもとに、の意で、「や」は詠嘆の間投助詞である。
結句「思ひおきけん」は、「おき」が露が「置き」の意と、思いを心に「置き」の意を掛ける掛詞である。「けん」は過去推量の助動詞の連体形で、四句の「何に」を受けて結んでいる。
おく:露が「置く」意と、思いを心に「置く」意を掛ける
たのむ:頼む。下二段活用で、頼みに思わせる、あてにさせる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
露ばかり頼めしほどの過ぎゆけば 消えぬばかりの心地こそすれ
- 次の歌
-
流れてと頼むるよりは山川の 恋しき瀬々に渡りやはせぬ