君や来む我や行かむのいさよひに
真木の板戸もささず寝にけり
- 歌の意味
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あなたが来るだろうか、私が行こうかとためらっているうちに、十六夜の月の夜は更け、真木の板戸も閉ざさずに寝てしまったことよ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 690
詞書「題しらず」
相手が来るのを待つか、自分から出向くかとためらううちに、戸も閉めずに寝入ってしまったという歌である。「いさよひ」にためらいと十六夜の月を掛け、恋のもどかしさを月夜の情景に重ねている。
前歌に続く「待つ」の一連の歌で、待つか行くかに揺れる心が詠まれている。戸を閉めずに寝たことには、なお相手の訪れを待つ思いが残されている。
初句「君や来む」は、あなたが来るだろうかの意で、係助詞「や」と推量の「む」で相手の訪れを推し量っている。
二句「我や行かむの」は、私が行こうかの意で、初句と対句をなし、二つの思いの間で揺れる心を表す。
三句「いさよひに」は、ためらう意の「いさよふ」と、陰暦十六日の月の「十六夜」を掛けた掛詞である。
四句「真木の板戸も」は、杉や檜などの良材で作った板戸をいい、係助詞「も」が添えられている。
結句「ささず寝にけり」は、戸を閉ざさずに寝てしまったことよの意で、完了の「ぬ」と詠嘆の「けり」で結ぶ。
いさよひ:ためらう意のいさよふの名詞形と、陰暦十六日の夜の意の十六夜を掛ける
まき:杉や檜などの良材
さす:戸を閉ざす
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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さむしろに衣片敷き今宵もや 我を待つらむ宇治の橋姫
- 次の歌
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今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな