さむしろに衣片敷き今宵もや
我を待つらむ宇治の橋姫
- 歌の意味
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狭い筵に自分の衣だけを敷いて、今夜もまた私を待っているのだろうか、宇治の橋姫は。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 689
詞書「題しらず」
宇治の橋姫が今夜も独り寝をしながら自分を待っているだろうかと、訪れることのできない相手を思いやる歌である。伝説の橋姫の名で待つ女を呼ぶことで、恋人の姿に神秘的な趣が添えられている。
本歌から第六百九十四首までは「待つ」ことを主題とする歌が続き、本歌は待たせている男の側から待つ女を思いやる形で一連を始めている。左注に「又は、宇治の玉姫」とあり、結句を「宇治の玉姫」とする伝えがあったことが知られる。
後代に大きな影響を与えた歌で、藤原定家の「さむしろや待つ夜の秋の風ふけて月をかたしく宇治の橋姫」をはじめ、新古今時代に多くの本歌取りが詠まれた。
初句「さむしろに」の「さむしろ」は、幅の狭い筵のことで、「さ」は接頭語である。独り寝の侘しい寝床を示している。
二句「衣片敷き」は、自分の衣の片袖だけを敷いて寝るの意で、共寝の相手のいない独り寝を表す。
三句「今宵もや」は、今夜もまたの意で、係助詞「や」が四句の「らむ」と係り結びをなし、これまでの夜も待たせてきたことをうかがわせる。
四句「我を待つらむ」は、私を待っているのだろうかの意で、現在推量の「らむ」で遠くにいる相手の今の様子を思いやる。本巻の「待つ」の一連の始まりとなる句である。
結句「宇治の橋姫」は、宇治橋を守る女神で、ここでは宇治に住む恋人をたとえている。名詞で止める体言止めであり、四句との倒置によって呼びかけるような余韻を残している。
さむしろ:幅の狭い筵
かたしく:自分の衣の片袖だけを敷いて独り寝をする
はしひめ:橋を守る女神。宇治の橋姫は宇治橋の守り神として伝説化された
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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思ふてふ言の葉のみやあきを経て 色も変はらぬものにはあるらむ
- 次の歌
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君や来む我や行かむのいさよひに 真木の板戸もささず寝にけり