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流れてと頼むるよりは山川の
恋しき瀬々に渡りやはせぬ

歌の意味
時が流れてのちにと頼みに思わせるよりは、山川の瀬を渡るように、恋しく思うその折々に、渡って来てはくれないのか。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 691

詞書「題しらず」
 いずれ時が流れてからと先の約束で頼ませるよりは、恋しく思う折々に、山川の瀬を渡るように来てくれないのかと詠む歌である。「流れ」「瀬々」「渡り」を山川の縁語として、先延ばしの約束よりも今の逢瀬を求める思いを表している。前の二首の「頼む」を受け、頼ませるだけの相手を責めている。

 初句「流れてと」は、時が流れてのちにと、の意で、「流れ」は三句の「山川」の縁語である。
 二句「頼むるよりは」は、頼みに思わせるよりは、の意で、前歌の第六百九十首の二句「頼むることも」と同じ語を用いている。
 三句「山川の」は、山の中を流れる川の、の意である。
 四句「恋しき瀬々に」は、恋しく思う折々に、の意で、「瀬」に川の浅瀬と、折、機会の意を重ねている。第六百四十九首の結句「渡る瀬もなし」と、「瀬」と「渡る」を共有している。
 結句「渡りやはせぬ」は、渡って来てはくれないのか、の意で、係助詞「やは」は反語を表し、打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」で結ぶ係り結びである。

せぜ:瀬々。川のあちこちの浅瀬。折々
わたる:渡る。川を渡る、通って来る
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
露ばかり頼むることもなきものを あやしや何に思ひおきけん
次の歌
逢ひ見ては死にせぬ身とぞなりぬべき 頼むるにだに延ぶる命は