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長らへば人の心も見るべきに
露の命ぞ悲しかりける

歌の意味
生き長らえるならば、あの人の心の行く末も見届けることができるだろうに、露のようにはかない命が悲しいことだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 894

詞書「題しらず」
 生き長らえたならあの人の心の行方も見届けられるのに、露のようにはかない命が悲しい、と詠んだ歌である。相手の心がいつか自分に向くのを見届けたいと願いながら、それまで命がもちそうにないことを嘆いている。
 前歌の第八百九十三首の白露を受けて、露の命を詠む歌が続いている。前歌が心に置く露であるのに対し、本歌は消えやすい命としての露であり、同じ露を別の面から扱っている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「長らへば」は、生き長らえるならば、の意で、「ば」は仮定の条件を表す。
 二句「人の心も」は、あの人の心も、の意で、相手の心の行く末を指している。
 三句「見るべきに」は、見届けられるはずなのに、の意で、「に」は逆接の接続助詞である。
 四句「露の命ぞ」は、露のようにはかない命が、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。前歌の「白露」と露の語を共有している。
 結句「悲しかりける」は、悲しいことだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。

ながらふ:生き長らえる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
つらしとや言ひ果ててまし白露の 人に心はおかじと思ふを
次の歌
ひとり寝る時は待たるる鳥の音も まれに逢ふ夜はわびしかりけり