今しはとわびにしものをささがにの
衣にかかり我を頼むる
- 歌の意味
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今はもうこれまでと嘆いてあきらめていたのに、蜘蛛が衣にかかって、あの人が来るかもしれないと私に期待を抱かせる。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 773
詞書「題しらず」
もう終わりだとあきらめていたのに、蜘蛛が衣にとりついたことで恋人の訪れを期待してしまうと詠む歌である。蜘蛛が衣にかかると待ち人が来る前兆とする俗信を踏まえ、あきらめきれない心の揺れを描いている。
この俗信は、古今和歌集の仮名序にも引かれる衣通姫の「わが背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも」に見え、古くから知られていた。
初句「今しはと」は、今はもうこれまでの意で、「し」は強意の副助詞である。関係の終わりを覚悟した言葉である。
二句「わびにしものを」は、「にし」が完了と過去で、嘆いてあきらめていたの意、「ものを」は逆接である。
三句「ささがにの」は、蜘蛛をいう語で、蜘蛛の姿が小さな蟹に似ることによる。「蜘蛛」にかかる枕詞としても用いられる。
四句「衣にかかり」は、蜘蛛が衣にとりつくことで、待ち人が来る前兆とされた。
結句「我を頼むる」は、「頼むる」が下二段活用の「頼む」の連体形で、期待させる、当てにさせるの意となる。あきらめた心が再び揺らぐさまを示す。
わぶ:嘆く、つらく思う
ささがに:蜘蛛の異称
たのむ:下二段活用で、期待させる、当てにさせる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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来めやとは思ふものからひぐらしの 鳴く夕暮れは立ち待たれつつ
- 次の歌
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今は来じと思ふものから忘れつつ 待たるることのまだもやまぬか