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はし鷹の野守の鏡得てしがな
思ひ思はずよそながら見ん

歌の意味
はし鷹の姿を映し出したという野守の鏡を手に入れたいものだ。あの人が私を思っているのかいないのか、離れたままで見てみよう。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1432

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 野と田に寄せる一連の三首目である。遠くのものを映すという野守の鏡を手に入れて、相手が自分を思っているかどうか、離れたままで見てみたいと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
 野守の鏡は、野の番人である野守の持つ鏡で、逃げたはし鷹の行方を映し出したという言い伝えがあり、離れたものを映し見る鏡として歌に詠まれた。のちに世阿弥の能『野守』の題材ともなった。

 初句「はし鷹の」は、鷹狩に用いる小型の鷹をいい、その鷹の行方を映したという野守の鏡の故事を呼び起こす。
 二句「野守の鏡」は、野の番人の持つ鏡で、離れたものを映し出すとされる。前歌の秋の田から、野へと景が移る。
 三句「得てしがな」は、手に入れたいものだ、の意で、願望を表す。三句で切れる。
 四句「思ひ思はず」は、思っているのか思っていないのか、の意である。
 結句「よそながら見ん」は、離れたままで見よう、の意で、「ん」は意志である。前歌が一方的な物思いを嘆いたのに対し、この歌は相手の心を確かめたいと願い、一連の結びとして相手の心そのものへと思いを向けている。

はしたか:鷹狩に用いる小型の鷹
のもり:野の番人
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
秋の田の穂向けの風の片寄りに 我は物思ふつれなきものを
次の歌
大淀のまつはつらくもあらなくに うらみてのみも帰る波かな