大淀のまつはつらくもあらなくに
うらみてのみも帰る波かな
- 歌の意味
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大淀の浜の松は、そして待つ私は、つれなくもないのに、浦を見るだけで恨んで帰ってゆく波であることよ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1433
詞書は前の歌に続き「題しらず」
浦と波に寄せる一連の一首目である。大淀の松のように待つ自分はつれなくもないのに、浦を見るだけで恨んで帰ってゆく波のように、相手は去ってゆくと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
大淀は伊勢国の歌枕で、現在の三重県多気郡明和町にあたる。この歌は『伊勢物語』第七十二段に見え、伊勢の国の女が、逢えないまま隣の国へ去る男に詠んだ歌とされる。
初句「大淀の」で、伊勢の浜の歌枕が示される。
二句「まつはつらくも」の「まつ」は、浜の「松」と、人を「待つ」を掛ける掛詞である。
三句「あらなくに」は、ないのに、の意である。三句で切れる。待つ自分はつれなくないのに、と訴える。
四句「うらみてのみも」の「うらみ」は、「浦見」と「恨み」を掛ける掛詞である。浦を見るだけで、恨んでばかりで、の意となる。
結句「帰る波かな」は、帰ってゆく波であることよ、と詠嘆の「かな」で結ぶ。寄せては返す波に、去ってゆく相手が重ねられている。前歌までの野の景から、ここで浦と波の景へと移り、巻は海辺の歌で閉じられてゆく。
まつ:浜の「松」と、人を「待つ」を掛ける
うらむ:「浦見」と「恨み」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はずよそながら見ん
- 次の歌
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白波は立ち騒ぐともこりずまの 浦のみるめは刈らんとぞ思ふ