秋の田の穂向けの風の片寄りに
我は物思ふつれなきものを
- 歌の意味
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秋の田の稲穂を一方へなびかせる風のように、私はひたすら一方的に物思いをしている。あの人はつれないのに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1431
詞書は前の歌に続き「題しらず」
野と田に寄せる一連の二首目である。秋の田の稲穂が風で一方になびくように、自分ばかりが一方的に物思いをしている、相手はつれないのにと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
『万葉集』巻十に、二句を「穂向きの寄れる」とする歌が見え、その異なる伝えである。
初句「秋の田の」は、稲穂の実る秋の田をいう。前歌の草葉の露の野から、田へと景が移る。
二句「穂向けの風の」は、稲穂を一方へ向ける風の、の意である。
三句「片寄りに」は、一方にばかり寄って、の意である。初句から二句までが、稲穂がなびくさまから「片寄り」を導く序詞となる。
四句「我は物思ふ」は、私は物思いをする、の意で、字余りである。
結句「つれなきものを」は、あの人はつれないのに、の意で、「ものを」は逆接の詠嘆である。一方になびく稲穂と、なびかない相手とが対比されている。本巻の第千三百六十一首がなびかない煙で揺るがぬ心を示したのに対し、この歌では自分の方がなびいている。
ほむけ:稲穂を一方へ向けること
かたより:一方にばかり寄ること
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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逢ふことをおぼつかなくて過ぐすかな 草葉の露の置きかはるまで
- 次の歌
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はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はずよそながら見ん