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梓弓ひきののつづら末つひに
我が思ふ人に言の繁けむ

歌の意味
梓弓を引くという引野に生えるつづらの蔓の先が伸び広がっていくように、行く末にはついに、私の思う人について人の噂がしきりに立つことだろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 702

詞書「題しらず」
 引野のつづらの蔓が先へ先へと伸び広がるように、行く末には二人の仲について世間の噂が繁くなるだろうと案じる歌である。作者は原文で「よみ人しらず」とされるが、一説に「あめのみかど」とされ、左注には、ある人の言として「天の帝の近江の采女に賜ひける」とある。
 左注の「天の帝」は天智天皇を指すとされ、天皇に仕える采女との恋が人の口にのぼることを気づかった歌と解される。次歌の第七百三首は、その返しとして采女が詠んだと伝える歌で、二首は贈答をなしている。
 前歌の雷神でさえ裂けない仲に対し、ここでは人の「言」が二人の仲を脅かすものとして現れ、第七百三首の「言繁くとも」、第七百四首の「里人の言は」と、人の噂を主題とする歌が続いていく。

 初句「梓弓」は、梓の木で作った弓で、弓を「引く」ことから二句の「ひきの」にかかる枕詞である。
 二句「ひきののつづら」の「ひきの」は、地名の「引野」と弓を「引き」を掛けた掛詞で、「つづら」は蔓性の植物である。
 三句「末つひに」は、蔓の先が伸びていくさまと、行く末にはついにの意を重ね、ここまでが比喩となっている。
 四句「我が思ふ人に」は、私の思う人についての意である。
 結句「言の繁けむ」は、人の噂がしきりになるだろうの意で、蔓が繁ることと噂の繁さを重ね、推量の「む」で結ぶ。

あづさゆみ:梓の木で作った弓
ひきの:地名の引野の意と、弓を引く意を掛ける
つづら:つる性の植物の総称
こと:うわさ
うねめ:天皇の食事などに奉仕した女官
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
天の原踏みとどろかし鳴る神も 思ふ仲をば裂くるものかは
次の歌
夏引きの手引きの糸を繰り返し 言繁くとも絶えむと思ふな