夏引きの手引きの糸を繰り返し
言繁くとも絶えむと思ふな
- 歌の意味
-
夏に引き出した手引きの糸を繰り返し手繰るように、繰り返し人の噂がしきりに立っても、二人の仲が絶えようとは思わないでください。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 703
詞書「題しらず」
前歌への返しとして采女が詠んだと伝えられる歌で、噂がどれほど立っても二人の仲は絶えないと、相手を励ます心を詠んでいる。糸を繰る女性の手仕事を序詞に用い、「繰り返し」「絶え」と糸の縁語で一首を貫いている。
作者は原文で「よみ人しらず」とされるが、一説に「あふみのうねめ」とされ、左注に「この歌は、返しによみてたてまつりけるとなむ」とある。前歌の「言の繁けむ」を「言繁くとも」と受け、天皇の不安に対して仲の揺るぎなさを答えている。
初句「夏引きの」は、夏に繭から糸を引き出すことをいい、「糸」にかかる枕詞である。
二句「手引きの糸を」は、手で紡ぎ出した糸をいい、ここまでが三句の「繰り返し」を導く序詞となる。
三句「繰り返し」は、糸を繰る動作と、何度もの意を重ねている。
四句「言繁くとも」は、噂がしきりに立ってもの意で、前歌の結句「言の繁けむ」を受けている。
結句「絶えむと思ふな」は、仲が絶えようとは思うなの意で、「絶え」は糸の縁語であり、禁止の「な」で結ぶ。
なつひき:夏に繭から糸を引き出すこと。またその糸
てひき:手で糸を紡ぎ出すこと
くる:糸を巻き取る
たゆ:切れる、途絶える
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
梓弓ひきののつづら末つひに 我が思ふ人に言の繁けむ
- 次の歌
-
里人の言は夏野の繁くとも かれゆく君に逢はざらめやは