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里人の言は夏野の繁くとも
かれゆく君に逢はざらめやは

歌の意味
里の人々の噂が夏の野の草のように繁くても、私から離れていくあなたに逢わずにいられようか、いや逢わずにはいられない。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 704

詞書「題しらず」
 夏野の草のように人の噂が繁くても、離れていこうとする恋人に逢わずにはいられないという、噂をおそれずに恋人を求める歌である。「繁く」と「かれ」を夏草の縁で結びつけ、噂と恋の衰えを草の姿に重ねている。
 第七百二首、第七百三首の「言の繁けむ」「言繁くとも」に続き、「里人の言」と人の噂を主題とする一連の結びとなっている。「かれゆく」は本巻の第六百八十六首の「かれはてむ」と同じく、枯れと離れを掛ける趣向である。

 初句「里人の」は、その里に住む人々をいい、世間の人の目を示す。
 二句「言は夏野の」は、噂は夏の野のの意で、夏野の草が繁ることから三句の「繁く」を導く。
 三句「繁くとも」は、繁くてもの意の逆接の仮定条件で、噂の多さと夏草の茂りを重ねている。
 四句「かれゆく君に」の「かれ」は、草の「枯れ」と人が遠ざかる「離れ」を掛けた掛詞で、夏野の縁語である。
 結句「逢はざらめやは」は、逢わないでいられようか、いや逢わずにはいられないの意で、反語の「やは」で結ぶ。

さとびと:その里に住む人
こと:うわさ
かる:草木が枯れる意と、人が離れて疎遠になる意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
夏引きの手引きの糸を繰り返し 言繁くとも絶えむと思ふな
次の歌
数々に思ひ思はず問ひがたみ 身を知る雨は降りぞまされる