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紅葉葉にたまれる雁の涙には
月の影こそ移るべらなれ

歌の意味
紅葉の葉にたまっている雁の涙には、月の光が映っているようだ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 422

詞書「題しらず」
 紅葉の葉にたまっている雁の涙には、月の光が映っているようだと詠んだ歌である。紅葉の上の露を雁の涙に見立て、その一滴に月の光が宿るさまをとらえている。
 古今和歌集のよみ人しらずの歌「鳴きわたる雁の涙や落ちつらむ物思ふ宿の萩の上の露」と同じく、露を雁の涙に見立てている。本巻の第三百五十五首から続いた雁の歌の一連と呼応し、ここで紅葉と雁と月を取り合わせている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「紅葉葉に」は、紅葉した木の葉に、の意である。
 二句「たまれる雁の」は、たまっている雁の、の意である。
 三句「涙には」は、涙には、の意で、紅葉の上の露を雁の涙に見立てている。
 四句「月の影こそ」の「影」は光の意で、「こそ」は強めの係助詞である。
 結句「移るべらなれ」の「移る」は映る意で、「べらなり」は推量を表す語である。四句の「こそ」と已然形「べらなれ」が係り結びをなし、映っているようだ、の意である。

かげ:光、また光に映る姿
べらなり:平安時代初期に用いられた推量の語、〜ようだ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
風の音の限りと秋や責めつらん 吹きくるごとに声のわびしき
次の歌
おほかたの秋の空だにわびしきに 物思ひ添ふる君にもあるかな