古典和歌stream

風の音の限りと秋や責めつらん
吹きくるごとに声のわびしき

歌の意味
これが最後と、秋が風の音を責め立てたのだろうか。吹いてくるたびに、その声がわびしいことだ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 421

詞書「題しらず」
 秋がもう終わりだと風の音を責め立てたのだろうか、吹いてくるたびにその声がわびしく聞こえると詠んだ歌である。晩秋の風の音のもの寂しさを、去りゆく秋に責め立てられて出す悲痛な声としてとらえている。
 前歌のひぐらしの声に続き、本歌は晩秋の風の声を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「風の音の」は、風の音が、の意で、字余りである。
 二句「限りと秋や」の「限り」は、これが最後、終わり、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 三句「責めつらん」は、責め立てたのだろうか、の意で、二句の「や」と連体形「らん」が係り結びをなす。ここで句切れとなる。
 四句「吹きくるごとに」は、吹いてくるたびに、の意である。
 結句「声のわびしき」は、その声がわびしいことだ、の意で、連体形で止めて詠嘆の余韻を残している。

かぎり:限界、終わり、最後
せむ:責め立てる、せきたてる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
ひぐらしの声もいとなく聞こゆるは 秋夕暮になればなりけり
次の歌
紅葉葉にたまれる雁の涙には 月の影こそ移るべらなれ