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いにしへのしづのをだまきいやしきも
よきも盛りはありしものなり

歌の意味
昔の倭文の苧環を繰り返すように、身分の低い者も高い者も、それぞれに盛りの時はあったものなのだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 888

詞書「題しらず」
 昔の織物である倭文の糸巻きを序として、身分の上下にかかわらず人には盛りの時があったと詠む歌である。今は衰えた身を顧み、誰にでも華やかな時期があったのだと懐かしむ心がこめられている。作者は未詳である。

 初句「いにしへの」は、前歌の第八百八十七首と同じ初句で、昔を懐かしむ心を引き継ぐ。
 二句「しづのをだまき」の「しづ」は、古代の織物である「倭文」と、身分の低い意の「賤」を掛けた掛詞である。「をだまき」は紡いだ糸を丸く巻いたもので、上二句が序詞となる。
 三句「いやしきも」は、二句の「しづ」を受けて、身分の低い者もの意となる。
 四句「よきも盛りは」は、身分の高い者も盛りの時はの意で、「いやしき」と「よき」が対になる。
 結句「ありしものなり」は、過去の「し」と断定の「なり」で、盛りは確かにあったものだと言い切る。

しづ:古代の織物である倭文の意と、身分の低い意の賤を掛ける
をだまき:紡いだ麻糸を丸く巻いたもの、苧環
さかり:勢いの盛んな時期
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
いにしへの野中の清水ぬるけれど 本の心を知る人ぞ汲む
次の歌
今こそあれ我も昔はをとこ山 さかゆく時もありこしものを