ここにしも何匂ふらん女郎花
人の物言ひさがにくき世に
- 歌の意味
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よりによってこの僧坊に、どうして女郎花が美しく咲いているのだろう。人の噂が意地悪くうるさい世の中なのに。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1098
詞書「房の前栽見に女ども詣で来たりければ」
人の噂がうるさい世の中なのに、よりによってこの僧坊に、どうして女郎花が美しく咲いているのだろうかと詠む歌である。詞書から、遍昭の僧坊の庭の草木を見に女たちがやって来た折の歌とわかる。訪れた女たちを女郎花になぞらえ、僧の住まいに女が来ればどんな噂を立てられるかわからないと、戯れて詠んでいる。
作者の僧正遍昭は、桓武天皇の孫で、俗名を良岑宗貞という。仁明天皇の崩御を機に出家し、のちに僧正となった。六歌仙、三十六歌仙に数えられる。
初句「ここにしも」は、よりによってここに、の意で、「しも」は強意の副助詞である。僧坊であることを強調している。
二句「何匂ふらん」は、どうして美しく咲いているのだろう、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。
三句「女郎花」は、訪れた女たちを重ねた語で、ここで句切れとなる。前歌の第千九十七首、本巻の第千百首の三句「女郎花」と同じ語を共有している。
四句「人の物言ひ」は、世間の人の噂、口出し、の意である。
結句「さがにくき世に」は、意地が悪くうるさい世の中なのに、の意で、二句の理由を倒置して添えている。
ばう:房。僧の住まい
せんざい:前栽。庭先に植えた草木
まうでく:詣で来。参上する、やって来る
ものいひ:物言ひ。人の噂や口出し
- 作者
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遍昭
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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行く水の岸ににほへる女郎花 忍びに浪や思ひかくらん
- 次の歌
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秋の野の花の色々取りすゑて 我が衣手に移してしかな