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行く水の岸ににほへる女郎花
忍びに浪や思ひかくらん

歌の意味
流れゆく川の岸に美しく咲いている女郎花に、波はひそかに思いをかけ、しぶきをかけているのだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1097

詞書「三条太政大臣家にて歌人召し集めて、あまたの歌よませ侍りけるに、岸のほとりの花といふことを」
 流れゆく川の岸に美しく咲く女郎花に、波がしぶきをかけるのは、ひそかに思いをかけているからだろうかと詠む歌である。詞書から、三条太政大臣藤原頼忠の家に歌人たちが召し集められ、多くの歌を詠ませた折に、「岸のほとりの花」という題で詠んだ歌とわかる。女郎花を女性に、波をひそかに恋する男に見立て、題の景を恋の趣向で描いている。
 ここから第千百首まで、女郎花を詠む歌が続いている。
 作者の源重之は、清和源氏の出で、地方官を歴任し、晩年は陸奥に下ってその地で没した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「行く水の」は、流れてゆく川の水の、の意である。
 二句「岸ににほへる」は、岸に美しく咲いている、の意で、「にほふ」は色美しく照り映える意、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「女郎花」は、秋の七草の一つで、その名から女性に見立てられる花である。次歌の第千九十八首、本巻の第千百首も三句に「女郎花」を置き、女郎花の歌が並んでいる。
 四句「忍びに浪や」は、ひそかに波が、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 結句「思ひかくらん」は、「かく」が波がしぶきを「掛く」と、思いを「掛く」を掛ける掛詞で、思いをかけているのだろうか、の意となる。「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、四句の「や」を受けた係り結びである。

にほふ:匂ふ。色美しく照り映える
かく:波がしぶきを「掛く」意と、思いを「掛く」意を掛ける
作者
源重之
出典
拾遺和歌集
前の歌
藻塩焼く煙に馴るる須磨の海人は 秋たつ霧もわかずやあるらん
次の歌
ここにしも何匂ふらん女郎花 人の物言ひさがにくき世に