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夜を寒み衣かりがね鳴くなへに
萩の下葉は色づきにけり

歌の意味
夜が寒いので衣を借りたいと思う頃、雁が鳴くのにつれて、萩の下葉は色づいたことだ。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1119

詞書「題しらず」
 夜が寒くなり、衣を借りたいと思うほどの頃、雁が鳴きわたるのにつれて、萩の下葉が色づいたと詠む歌である。夜寒と雁の声と萩の下葉の色づきとを重ねて、深まる秋を描いている。
 古今和歌集の秋歌に、結句を「萩の下葉もうつろひにけり」とする歌がある。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。万葉集を代表する歌人で、後世、歌聖と仰がれた。三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌や人麻呂歌集の歌が人麻呂の作として多く収められている。

 初句「夜を寒み」は、夜が寒いので、の意で、「を…み」は原因を表す語法である。
 二句「衣かりがね」は、「かりがね」が衣を「借り」と、雁の鳴き声の「雁がね」を掛ける掛詞である。夜の寒さから衣を借りたいという意を導いて、雁へと転じている。
 三句「鳴くなへに」は、鳴くのにつれて、の意で、「なへに」は…とともに、の意を表す。
 四句「萩の下葉は」は、前歌の第千百十八首の四句と同じ句である。
 結句「色づきにけり」は、前歌の第千百十八首、本巻の第千百十四首の結句と同じ句で、萩の下葉の色づきを詠む二首が並んでいる。

かりがね:衣を「借り」の意と、雁の鳴き声、また雁そのものをいう「雁がね」を掛ける
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
このころの暁露に我が宿の 萩の下葉は色づきにけり
次の歌
かの見ゆる池辺に立てるそが菊の 茂みさ枝の色のてこらさ