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一枝は折りて帰らむ山桜
風にのみやは散らし果つべき

歌の意味
一枝だけは折って帰ろう、山桜よ。風にばかり散らし尽くさせてよいものか、いやよくはない。
鑑賞
巻第二 春歌下 94

詞書は前の歌に続き「花の歌とてよめる」
 前歌と同じく「花」を題として詠んだ歌である。どうせ風に散らされてしまうのならば、せめて一枝だけは折って持ち帰ろう、山桜を風にばかり散らし尽くさせてなるものか、と詠む。花を折ることをためらう伝統的な心に対して、風に奪われるよりは自分の手で留めておきたいという強い愛惜を表している。
 作者の「源有房」は大蔵卿源師行の子である。薩摩守、近衛少将などを経て、右近衛中将に至った。

 初句「一枝は」の「は」は、他はともかく一枝だけは、という限定と強調を表す。
 二句「折りて帰らむ」の「む」は意志の助動詞で、折って帰ろう、の意となる。
 三句「山桜」は、山桜への呼びかけで、ここで句切れとなる。
 四句「風にのみやは」の「のみ」は限定、「やは」は反語の係助詞で、風にばかり〜してよいものか、の意となる。結句の「べき」と係り結びをなす。
 結句「散らし果つべき」の「果つ」はすっかり〜し尽くす意、「べき」は適当を表す助動詞の連体形で、「やは」の結びとなる。風にばかり散らし尽くさせてよいはずがない、と強く打ち消す。

はつ:すっかり〜し尽くす
作者
源有房
出典
千載和歌集
前の歌
み吉野の山下風や払ふらむ 梢にかへる花の白雪
次の歌
散る花を身にかふばかり思へども かなはで年の老いにけるかな