思ふことなき身なりせば時鳥
夢に聞く夜もあらましものを
- 歌の意味
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もし物思いのない身であったなら、時鳥の声を夢の中で聞く夜もあっただろうに。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 160
詞書「右大臣に侍りける時、家に百首歌よませ侍りけるに、郭公の歌とてよめる」
兼実が右大臣であった頃、自邸で人々に百首歌を詠ませた際に、「時鳥」を題として詠んだ歌である。物思いのない身であったなら、ぐっすりと眠って時鳥の声を夢の中で聞く夜もあっただろうに、物思いのために眠れず、いつも目覚めたまま聞いている、と詠む。時鳥を待って眠れない夜を詠む歌が多い中で、眠れない理由を物思いに求め、夢で聞きたいという願いによって心の憂いを表している。
作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、右大臣を経て摂政に至った。千載和歌集の成立当時の摂政であり、日記「玉葉」を残した。
初句「思ふこと」は、物思い、心にかかる憂いをいう。
二句「なき身なりせば」の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形で、「ば」とともに反実仮想の仮定条件となる。物思いのない身であったなら、の意である。
三句「時鳥」は、四句の「聞く」の対象を示す。
四句「夢に聞く夜も」は、夢の中で聞く夜も、の意である。本巻の第百四十八首、第百四十九首が時鳥を待って寝ない夜を詠んだのに対し、本歌は物思いのために眠れない夜を詠む。
結句「あらましものを」の「まし」は反実仮想の助動詞で、二句の「せば」と呼応する。「ものを」は逆接の詠嘆で、あっただろうに、の意となる。
おもふこと:物思い、心にかかる憂い
- 作者
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九条兼実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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一声はさやかに鳴きて時鳥 雲路はるかに遠ざかるなり
- 次の歌
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時鳥鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる