山陰や岩もる清水音冴えて
夏のほかなるひぐらしの声
- 歌の意味
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山陰では、岩の間から漏れ流れる清水の音が冷たく澄んで、夏とは思えないひぐらしの声が聞こえる。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 210
詞書「題しらず」
山陰では、岩の間から漏れ流れる清水の音が冷たく澄みわたり、そこに聞こえるひぐらしの声も、夏の外にあるかのように涼しい、と詠む。清水の音とひぐらしの声という二つの音によって、真夏にありながら秋のような涼しさを感じさせる一首である。ここから清水や納涼の歌が続く。
作者の「法印慈円」は関白藤原忠通の子である。天台座主を四度務め、のちに大僧正に至った。歴史書「愚管抄」を著し、小倉百人一首にも歌が採られている。
本歌から第二百十四首までの五首は、清水や山の水によって夏の涼しさを詠む一連である。
初句「山陰や」の「や」は詠嘆の間投助詞で、山陰よ、と場所を示す。
二句「岩もる清水」の「もる」は漏れる意で、岩の間から漏れ流れる清水をいう。本巻の第二百十二首「岩間もる清水」も同じ趣向を詠む。
三句「音冴えて」の「冴ゆ」は、音が冷たく澄む意である。本巻の第百八十八首では月が冴えたが、本歌では清水の音が冴える。
四句「夏のほかなる」は、夏の外にある、夏とは思えない、の意である。
結句「ひぐらしの声」は体言止めで、夕暮れに鳴く蝉の声をいう。初夏の衣替えに蝉の羽衣を詠んだ本巻の第百三十七首に対し、晩夏の蝉の声がここで詠まれる。
しみづ:地中や岩間から湧き出る清らかな水
ひぐらし:夏の終わりから秋にかけて夕暮れに鳴く蝉
もる:漏れる
- 作者
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慈円
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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あたりさへ涼しかりけり氷室山 まかせし水の凍るのみかは
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夕されば玉ゐる数も見えねども 関の小川の音ぞ涼しき