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あたりさへ涼しかりけり氷室山
まかせし水の凍るのみかは

歌の意味
あたりまでもが涼しいことだ、氷室山は。引き入れた水が凍っているだけだろうか、いやそればかりではない。
鑑賞
巻第三 夏歌 209

詞書「百首歌奉りける時、氷室の歌とてよみ侍りける」
 崇徳院に百首歌を奉った際に、「氷室」を題として詠んだ歌である。氷室山は、氷室に引き入れた水が凍っているだけでなく、そのあたり一帯までもが涼しい、と詠む。夏でも氷を保つ氷室の冷気が、山全体を涼しくしているさまを描き、納涼の心につなげている。
 作者の「大炊御門右大臣」は藤原公能である。左大臣藤原実能の子で、右大臣に至った。大炊御門に邸があったことからこの名で呼ばれる。崇徳院の久安百首の作者の一人である。

 初句「あたりさへ」の「さへ」は添加で、あたりまでもが、の意である。
 二句「涼しかりけり」の「けり」は詠嘆で、ここで句切れとなる。
 三句「氷室山」は、氷室のある山をいう。前歌の第二百八首に続き氷室を詠む。
 四句「まかせし水の」の「まかす」は水を引き入れる意、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。氷室に引き入れておいた水の、の意となる。
 結句「凍るのみかは」の「かは」は反語で、凍っているだけだろうか、いやそうではない、の意である。

まかす:水を引き入れる
ひむろやま:氷室のある山
作者
藤原公能
出典
千載和歌集
前の歌
春秋も後の形見はなきものを 氷室ぞ冬の名残なりける
次の歌
山陰や岩もる清水音冴えて 夏のほかなるひぐらしの声