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家の風吹き伝ふとも和歌の浦に
かひある言の葉にてこそ知れ

歌の意味
家の歌風を吹き伝えたとしても、和歌の浦に貝があるように、甲斐のある歌であるかどうかによってこそわかるのだ。
鑑賞
雑歌 934

詞書「返し」
 前歌への藤原公能の返歌である。家の歌風を吹き伝えたとしても、和歌の浦に貝があるように、甲斐のある歌であってこそ、それとわかるのだ、と詠む。前歌の「家の風」「かひありて」を受けて、家柄だけでは歌のよしあしは決まらないと謙遜している。

 初句「家の風」は、前歌の初句と同じ語で、相手の言葉を受けている。
 二句「吹き伝ふとも」の「とも」は逆接仮定の接続助詞で、吹き伝えても、の意である。
 三句「和歌の浦に」の「和歌の浦」は紀伊国の歌枕で、和歌を暗示している。六音の字余りである。
 四句「かひある言の」の「かひ」は、和歌の浦の貝と、甲斐とを掛けた掛詞で、前歌の「かひありて」を受けている。
 結句「葉にてこそ知れ」は、係助詞「こそ」と已然形「知れ」による係り結びで、言葉によってこそわかる、と結ぶ。四句から結句へ「言の葉」と句をまたいでいる。

わかのうら:紀伊国の歌枕
かひ:貝と、甲斐を掛ける
作者
藤原公能
出典
山家集
前の歌
家の風吹き伝へけるかひありて 散る言の葉の珍しきかな
次の歌
木枯らしに木の葉の落つる山里は 涙こそさへもろくなりけれ