うきねする猪名の湊に聞こゆなり
鹿の音おろす峰の松風
- 歌の意味
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舟で浮き寝をする猪名の湊に聞こえてくる。鹿の声を乗せて吹きおろす、峰の松風が。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 313
詞書は前の歌に続き「夜泊鹿といへる心をよめる」
「夜泊鹿」の題で詠んだ歌である。舟で浮き寝をする猪名の湊に、峰の松風が鹿の声を乗せて吹きおろしてくるのが聞こえる、と詠む。鹿の声だけでなく、それを運ぶ松風の音までをとらえ、山から海辺へと音が下ってくる遠近の広がりを描いている。
作者の「藤原隆信朝臣」は藤原為経の子である。母は美福門院加賀で、藤原定家の異父兄にあたる。似絵の名手として知られる。
前歌の第三百十二首と「うきね」「聞こゆなり」を共有し、同じ趣向を別の湊に移して詠む。
初句「うきねする」の「うきね」は、「浮き寝」と「憂き寝」とを掛ける掛詞である。前歌の第三百十二首の「うきねの床」を受ける。
二句「猪名の湊に」の「猪名の湊」は摂津国の猪名川の河口にあった港である。
三句「聞こゆなり」は、前歌の第三百十二首と同じ三句で、ここで句切れとなり、聞こえるものを下の句で示す。
四句「鹿の音おろす」は、鹿の声を乗せて吹きおろす、の意で、峰から湊へと下ってくる音の動きを示す。
結句「峰の松風」は体言止めである。前歌の第三百十二首が鹿の声そのものを結句に置いたのに対し、本歌はその声を運ぶ松風を結句に置く。
うきね:水の上に浮かんで寝る「浮き寝」の意と、つらい思いで寝る「憂き寝」の意を掛ける
ゐなのみなと:摂津国の猪名川の河口にあった港
おろす:風が山から吹きおろす
- 作者
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藤原隆信
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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湊川うきねの床に聞こゆなり 生田の奥のさを鹿の声
- 次の歌
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夜をこめてあかしの瀬戸を漕ぎ出づれば はるかに送るさを鹿の声