霜冴えて枯れゆく小野の岡辺なる
楢の広葉に時雨降るなり
- 歌の意味
-
霜が冷たく冴えて草木の枯れてゆく野の、岡のあたりにある楢の広い葉に、時雨が降る音がする。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 401
詞書「題しらず」
霜が冷たく冴えて枯れてゆく野の、岡のあたりの楢の広い葉に、時雨が降る音がする、と詠む。霜に枯れはじめた楢の葉を打つ時雨の音によって、初冬の野の寂しさを耳からとらえている。
作者の「藤原基俊」は右大臣藤原俊家の子である。源俊頼と並ぶ院政期の歌壇の重鎮で、藤原俊成の師にあたる。小倉百人一首にも歌が採られている。
本巻はここから霜の歌を離れて時雨の歌へと移り、第四百十七首まで時雨を詠む歌が続く。本歌は「霜冴えて」と前の霜の歌を受けつつ、時雨へと橋渡しをしている。
初句「霜冴えて」の「冴ゆ」は冷え込む、冷たく澄む意で、霜の冷たさをいう。本巻の第四百二十七首も同じ初句で始まる。
二句「枯れゆく小野の」は、草木が枯れてゆく野の、の意である。「小野」は野、野原をいう。
三句「岡辺なる」の「岡辺」は岡のあたり、「なる」は存在を示し、〜にある、の意である。
四句「楢の広葉に」の「楢」はブナ科の落葉高木で、その広い葉をいう。本巻の第四百四十五首も「楢の広葉に降れる白雪」と同じ句を置き、本歌の時雨に対して雪を降らせている。
結句「時雨降るなり」の「時雨」は晩秋から初冬に降ったりやんだりする雨である。「なり」は音による推定の助動詞で、時雨の降る音が聞こえる、の意である。
さゆ:冷え込む、冷たく澄む
をかべ:岡のあたり
しぐれ:晩秋から初冬に降ったりやんだりする雨
- 作者
-
藤原基俊
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
冬来ては一夜二夜を玉笹の 葉分けの霜のところせきまで
- 次の歌
-
寝覚めして誰か聞くらんこの頃の 木の葉にかかる夜半の時雨を