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都だに寂しさまさる木枯らしに
峰の松風思ひこそやれ

歌の意味
都でさえ寂しさがつのる木枯らしの頃なので、山の峰に吹く松風はどれほど寂しいことかと思いやられる。
鑑賞
巻第六 冬歌 419

詞書「中納言定頼世を逃れてのち、山里に侍りけるころ、つかはしける」
 父の中納言藤原定頼が出家して山里に住んでいた頃に、娘である作者が送った歌である。都でさえ寂しさのつのる木枯らしの季節なので、山の峰の松風の寂しさはいかばかりかと思いやられる、と詠む。都の木枯らしから、山里にいる父の寂しさを推し量り、案じる心を伝えている。
 作者の「中納言定頼女」は権中納言藤原定頼の娘である。名や詳しい伝は伝わらない。
 本歌と次歌の第四百二十首は、娘と父の歌を並べる配列である。本歌が都から山里の父を思いやるのに対し、次歌は定頼が宇治で詠んだ歌で、都を離れた地の冬の景を詠む。

 初句「都だに」の「だに」は、〜でさえ、の意で、軽いものを挙げて重いものを類推させる。都でさえこうなのだから、山里はなおさらだ、の意を導く。
 二句「寂しさまさる」は、寂しさがいっそう増す、の意である。
 三句「木枯らしに」の「木枯らし」は、秋の末から冬にかけて吹く強く冷たい風である。
 四句「峰の松風」は、父の住む山里の峰に吹く松風をいう。
 結句「思ひこそやれ」の「思ひやる」は遠くのことを推し量る意で、間に強意の係助詞「こそ」を挟み、「やれ」と已然形で結ぶ。

こがらし:秋の末から冬にかけて吹く強く冷たい風
まつかぜ:松の梢を吹く風
おもひやる:遠くのことに思いを馳せ、推し量る
作者
藤原定頼女
出典
千載和歌集
前の歌
散り果てて後さへ風を厭ふかな 紅葉を葺ける深山辺の里
次の歌
朝ぼらけ宇治の川霧絶え絶えに 現れわたる瀬々の網代木