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岩越ゆる荒磯波に立つ千鳥
心ならでや浦伝ふらん

歌の意味
岩を越えて打ち寄せる荒磯の波に追われて飛び立つ千鳥は、自分の心からではなく、やむなく浦から浦へと伝ってゆくのだろうか。
鑑賞
巻第六 冬歌 426

詞書は前の歌に続き「千鳥をよめる」
 千鳥の題で詠んだ歌である。岩を越えて打ち寄せる荒磯の波に追われて飛び立つ千鳥は、自分の心からではなく、やむなく浦から浦へと伝ってゆくのだろうか、と詠む。波に追われて居場所を定められない千鳥の姿に、思うにまかせぬ身のはかなさを重ねている。
 作者の「道因法師」は藤原敦頼である。藤原清孝の子で、晩年に出家した。歌道への執心の深さで知られ、小倉百人一首にも歌が採られている。
 第四百二十四首から第四百二十八首までの五首は千鳥を詠む歌である。千鳥は冬の川辺や海辺で鳴く鳥として、冬の景物とされた。
 なお本文の四句は「心ならてや」とあり、読み仮名の行の「こころならすや」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「岩越ゆる」は、波が岩を越えて打ち寄せる、の意で、海の荒さを示す。
 二句「荒磯波に」の「荒磯」は岩の多い荒々しい海岸で、そこに打ち寄せる波をいう。
 三句「立つ千鳥」の「立つ」は飛び立つ意で、波に追われて飛び立つ千鳥をいう。
 四句「心ならでや」の「心ならで」は、自分の意志ではなく、の意である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と連体形で結ぶ。
 結句「浦伝ふらん」の「浦伝ふ」は浦から浦へと伝ってゆく意で、「らん」は現在推量の助動詞である。

あらいそ:岩の多い荒々しい海岸
うらづたふ:浦から浦へと伝ってゆく
作者
道因
出典
千載和歌集
前の歌
須磨の関有明の空に鳴く千鳥 かたぶく月は汝も悲しき
次の歌
霜冴えて小夜もながゐの浦寒み 明けやらずとや千鳥鳴くらん