千早ぶる神代のことも人ならば
問はましものを白菊の花
- 歌の意味
-
白菊の花よ、お前がもし人であったなら、神代の昔のことも尋ねてみたいのに。
- 鑑賞
-
巻第十 賀歌 621
詞書は前の歌に続き「保延二年法金剛院に行幸ありて、菊契多秋といへる心を詠ませ給うけるに、詠み侍りける」
前の二首と同じ行幸での歌である。白菊の花よ、お前が人であったなら神代のことも尋ねるのに、と詠む。神代から幾千の秋を重ねてきた白菊を、遥かな昔を知る長寿のものと見なし、物言わぬ花に呼びかけることで、菊の長寿とそれに託す御代の長久を祝っている。
作者の「八条前太政大臣」は藤原実行である。権大納言藤原公実の子で、太政大臣に至り、八条太政大臣と呼ばれた。三条家の祖である。
一連の三首目である。第六百十九首の三句「白菊の」を結句の「白菊の花」で受け、三首で行幸の折の菊の歌をなしている。また本巻の第六百十四首と同じく「神代」を持ち出して、長い年月を思わせている。
初句「千早ぶる」は「神」にかかる枕詞で、ここでは二句の「神代」にかかる。本巻の第六百十六首、第六百三十五首も同じ枕詞で始まる。
二句「神代のことも」は、神々の時代のことも、の意である。第六百十四首の初句「神代より」と共通する。
三句「人ならば」は、もし人であったならば、の意で、白菊の花を人に見立てる。
四句「問はましものを」の「まし」は反実仮想の助動詞で、三句の「ならば」と呼応する。尋ねてみたいのに、の意で、「ものを」は逆接の詠嘆をこめる。
結句「白菊の花」は体言止めで、花への呼びかけとなる。第六百十九首の三句「白菊の」と共通する。
かみよ:神々が治めていたという神話の時代
- 作者
-
藤原実行
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
八重菊の匂ふにしるし君が代は 千歳の秋を重ぬべしとは
- 次の歌
-
吹く風も木々の枝をば鳴らさねど 山は八千代の声ぞ聞こゆる