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八重菊の匂ふにしるし君が代は
千歳の秋を重ぬべしとは

歌の意味
八重菊が美しく咲き匂うのにはっきりと表れている。君の御代は千年の秋を重ねるにちがいないということが。
鑑賞
巻第十 賀歌 620

詞書は前の歌に続き「保延二年法金剛院に行幸ありて、菊契多秋といへる心を詠ませ給うけるに、詠み侍りける」
 前歌と同じ行幸での歌である。八重菊の咲き匂うさまにはっきり表れている、君の御代は千年の秋を重ねるであろうということが、と詠む。花びらを幾重にも重ねる八重菊の姿に、御代が秋を幾重にも重ねていくことの兆しを見ている。題の「多秋」を「千歳の秋」と詠み込んでいる。なお本文の二句は「匂ふにしるし」とあり、読み仮名の行の「にほひにしるし」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
 作者の「花薗左大臣」は源有仁である。後三条天皇の孫で、輔仁親王の子である。臣籍に降下して源姓となり、左大臣に至った。詩歌管弦に優れた。
 一連の二首目である。前歌の第六百十九首が白菊を千歳の「しるし」と詠んだのを受けるように、本歌は八重菊の匂いに千歳の秋が「しるし」と詠んでいる。

 初句「八重菊の」は、花びらの幾重にも重なった菊の、の意である。「八重」は結句の「重ぬ」と縁語になる。
 二句「匂ふにしるし」の「匂ふ」は色美しく咲き映える意、「しるし」は形容詞で、はっきりわかる、の意である。ここで句切れとなり、三句以下と倒置の関係にある。前歌の結句「しるしなるらん」と応じる。
 三句「君が代は」は、君の御代は、の意である。
 四句「千歳の秋を」は、題の「多秋」を受けて、千年の秋を、の意である。
 結句「重ぬべしとは」の「べし」は推量の助動詞で、重ねるにちがいないということは、の意である。「とは」で言いさし、二句の「しるし」へ返る倒置となる。

にほふ:色美しく咲き映える、香る
作者
源有仁
出典
千載和歌集
前の歌
君が代をなが月にしも白菊の 咲くや千歳のしるしなるらん
次の歌
千早ぶる神代のことも人ならば 問はましものを白菊の花