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山風に散り積む花の流れずは
いかで知らまし谷の下水

歌の意味
山風に散って積もった花が流れてこなかったならば、どうして知ることができただろうか、谷の底をひそかに流れる水のことを。
鑑賞
巻第二 春歌下 100

詞書「花浮澗水といへる心をよみ侍りける」
 「花浮澗水(花が谷川の水に浮かぶ)」という題で詠んだ歌である。山風に散って積もった花びらが流れてこなかったならば、草木に隠れて見えない谷の下を流れる水があることを、どうして知ることができただろうか、と詠む。目に見えない谷水の存在を、その上を流れる花びらによって知るという趣向で、落花が隠れた流れを教えてくれるという発見を詠んでいる。
 作者の「花薗左大臣」は源有仁である。後三条天皇の皇子輔仁親王の子で、白河院の猶子となって臣籍に降り、左大臣に至った。花園に邸があったことから花園左大臣と呼ばれ、詩歌や管弦に優れた。

 初句「山風に」は、花を散らす山から吹く風をいう。
 二句「散り積む花の」は、散って積もった花の、の意である。本巻の第七十七首「花も日数も積もりぬる」、第百五首「ちりつみて」も、散り積もる花を詠む。
 三句「流れずは」の「ずは」は、打消の仮定条件で、流れなかったならば、の意となる。
 四句「いかで知らまし」の「いかで」は反語、「まし」は反実仮想の助動詞で、三句の「ずは」と呼応する。どうして知ることができただろうか、いやできなかった、の意となる。ここで句切れとなり、結句と倒置の関係にある。
 結句「谷の下水」は体言止めで、木の葉や草の下を隠れて流れる谷の水をいう。前歌の第九十九首が池の水面に散る花を詠んだのに対し、本歌は谷川を流れる花を詠む。

したみづ:物の下を隠れて流れる水
作者
源有仁
出典
千載和歌集
前の歌
桜散る水の面にはせきとむる 花のしがらみかくべかりけり
次の歌
花のみな散りてののちぞ山里の 払はぬ庭は見るべかりける