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皇の末栄ゆべきしるしには
木高くぞなる若松の森

歌の意味
天皇の御代が末永く栄えるはずのしるしとして、木々が高く育っていく若松の森であることよ。
鑑賞
巻第十 賀歌 636

詞書「院御時、久寿二年大嘗会悠紀方風俗歌、近江国若松の森を詠める」
 後白河天皇の御代、久寿二年(1155)の大嘗会で、悠紀方の風俗歌として近江国の若松の森を詠んだ歌である。天皇の末が栄えるしるしとして、木高く茂っていく若松の森よ、と詠む。若い松が年ごとに高く育つさまに、新帝の御代が末永く栄えていく兆しを見て祝っている。詞書の「院」は本集の撰集を命じた後白河院をさす。なお本文の初句は「すへらき」とあり、読み仮名の行の「すめらき」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
 作者の「宮内卿永範」は藤原永範である。藤原南家の儒者で、文章博士を務め、宮内卿に至った。大嘗会の和歌をたびたび詠進した。
 巻末の第六百四十首は三上の山の杉群を「しるし」と詠み、本歌の若松の森と、ともに木々の群れを御代のしるしとしている。

 初句「皇の」の「皇」は天皇をいう。
 二句「末栄ゆべき」の「末」は子孫、行く末の意、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形で、末永く栄えるはずの、の意である。
 三句「しるしには」は、兆しとしては、の意である。本巻の第六百十九首、第六百二十七首、第六百四十首も「しるし」と詠む。
 四句「木高くぞなる」の「木高く」は木が高く茂る意、「ぞ」は強意の係助詞で、「なる」の連体形で結ぶ。
 結句「若松の森」は近江国の地名で、悠紀方の国の地名を詠み込む。「若松」の名が若々しく伸びていく御代を思わせる。体言止めである。

すべらき:天皇
ふぞくうた:大嘗会で悠紀、主基の国の風俗を詠んで奏した歌
ゆき:大嘗会で神饌を奉る第一の国、またその儀
作者
藤原永範
出典
千載和歌集
前の歌
千早ぶる神田の里の稲なれば 月日とともに久しかるべし
次の歌
君が代の数には如かじ限りなき 千坂の浦の真砂なりとも