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思ひ余り人に問はばや水無瀬川
むすばぬ水に袖は濡るやと

歌の意味
思いがあふれて、人に尋ねてみたいものだ。水の無い水無瀬川の、手にすくってもいない水に、袖が濡れるということがあるのかと。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 704

詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時、恋の心を詠み侍りける」
 堀河天皇の御代に百首歌を奉った時、恋の心を詠んだ歌である。この百首歌は堀河百首である。思いがあふれて人に尋ねたい、水無瀬川の、すくってもいない水に袖が濡れるものかと、と詠む。「水無瀬」の名にある「水無し」を生かし、水をすくってもいない、つまり契りを結んでもいないのに、恋の涙で袖が濡れてしまう不思議を人に問いかける形で、まだかなわぬ恋の苦しさを表している。
 作者の「大納言公実」は藤原公実である。権大納言藤原実季の子で、堀河天皇の母方の叔父にあたり、権大納言に至った。徳大寺左大臣藤原実能や、鳥羽天皇の中宮待賢門院璋子の父である。
 恋歌二の巻頭の一首である。巻第十一の巻頭の第六百四十一首も堀河百首の歌で、恋歌一と恋歌二がともに堀河百首の恋の歌で始まっている。また本巻では、袖が濡れることを詠む歌が第七百十三首、第七百十七首、第七百十八首と続き、本歌の問いかけがその後の配列に響いている。

 初句「思ひ余り」は、恋の思いが胸に収まりきらずあふれて、の意である。
 二句「人に問はばや」の「ばや」は自己の希望を表す終助詞で、人に尋ねてみたい、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 三句「水無瀬川」は摂津国の歌枕で、その名に「水無し」を響かせ、水のない川として四句の「水」へつなぐ。
 四句「むすばぬ水に」の「むすぶ」は、手で水をすくう意と、契りを結ぶ意を掛ける。すくってもいない水、すなわち契りも結んでいない恋をいう。
 結句「袖は濡るやと」の「や」は疑問の係助詞で、袖は濡れるものかと、の意である。二句の「問はばや」へ返る。本巻の第七百十三首の四句「袖は濡るる」と同じく、恋の涙に濡れる袖を詠む。

みなせがは:摂津国の歌枕。その名に水無しを響かせる
むすぶ:手で水をすくう意と、契りを結ぶ意を掛ける
作者
藤原公実
出典
千載和歌集
前の歌
いかにせん室の八島に宿もがな 恋の煙を空にまがへん
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はかなくも人に心を尽くすかな 身のためにこそ思ひ初めしか