いかにせん室の八島に宿もがな
恋の煙を空にまがへん
- 歌の意味
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どうしたらよいのだろう。室の八島に宿があればよいのに。そうすれば、恋の思いから立つ煙を、室の八島の煙にまぎらわせて空に紛れさせよう。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 703
詞書「忍ぶ恋を」
「忍ぶ恋」の題で詠んだ歌である。どうしたらよいのか、室の八島に宿があればよい、恋の煙を空に紛れさせよう、と詠む。室の八島は下野国の歌枕で、常に煙が立ちのぼる地とされた。恋の思いの「火」から立つ煙を隠しようもないので、煙の絶えない室の八島に住めば、その煙にまぎらわせて人に知られずにすむだろうと、忍ぶ恋の苦しさを奇抜な発想で詠んでいる。
作者の「皇太后宮大夫俊成」は権中納言藤原俊忠の子である。皇太后宮大夫を務め、のちに出家して釈阿と号した。後白河院の命を受けて本集を撰んだ。
恋歌一の巻末の一首である。巻頭の第六百四十一首が藻に埋もれる玉柏のように「あらはれてだに」恋をしたいと詠んだのに対し、巻末の本歌は恋の煙を空にまぎらわせて隠そうと詠み、表に現したい恋と隠したい恋とで巻頭と巻末が対をなしている。また初句の「いかにせん」は本巻の第六百四十六首、第六百六十八首、第六百九十一首と同じで、第六百六十五首の「すくも焚く火の下焦がれ」とも、恋を火と煙に寄せる点で共通する。
初句「いかにせん」は、どうしたらよいだろう、の意で、ここで句切れとなる。第六百四十六首、第六百六十八首、第六百九十一首も同じ初句で始まる。
二句「室の八島に」の「室の八島」は下野国の歌枕で、常に煙が立つ地として詠まれた。
三句「宿もがな」の「もがな」は願望の終助詞で、宿があればよいのに、の意である。ここで句切れとなる。
四句「恋の煙を」の「煙」は、恋の思いを「火」にたとえ、そこから立つ煙をいう。第六百六十五首の二句「すくも焚く火の」と同じく、恋を火に寄せる。
結句「空にまがへん」の「まがへ」は紛れさせる意の「まがふ」の未然形、「ん」は意志の助動詞「む」で、空の煙に紛れさせよう、の意である。
むろのやしま:下野国の歌枕。常に煙が立つ地とされた
けぶり:煙
まがふ:入り交じって見分けがつかないようにする
- 作者
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藤原俊成
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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照射する端山が裾の下露や 入るより袖はかくしをるらん
- 次の歌
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思ひ余り人に問はばや水無瀬川 むすばぬ水に袖は濡るやと