恋をのみしぐるる空のうき雲は
曇りもあへず袖濡らしけり
- 歌の意味
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恋の思いばかりを時雨のように降らせる空の、つらい浮き雲は、すっかり曇りきらないうちから、もう私の袖を濡らしてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 747
詞書「恋の歌とて詠める」
恋の歌として詠んだ歌である。恋ばかりを時雨のように降らせる空の浮き雲は、曇りきらないうちに袖を濡らしてしまった、と詠む。自分の心を時雨の空に、恋の憂いを浮き雲にたとえ、空が曇りきる前に時雨が降り出すように、思いが募りきらないうちから涙がこぼれてしまうという、恋の涙のもろさを表している。
作者の「藤原成家朝臣」は本集の撰者藤原俊成の子である。藤原定家の兄にあたり、官人として仕えた。
本巻の巻頭の第七百四首以来、袖の濡れを詠む歌は多いが、本歌はそれを時雨の空の景に託している。
初句「恋をのみ」は、恋ばかりを、の意で、二句の「しぐるる」にかかる。
二句「しぐるる空の」の「しぐる」は時雨が降る意で、恋の涙を時雨にたとえる。
三句「うき雲は」の「うき」は、空に浮かぶ意の「浮き」に、つらい意の「憂き」を掛ける。
四句「曇りもあへず」の「あへず」は、しきれない、の意で、すっかり曇りきらないうちに、の意である。
結句「袖濡らしけり」の「けり」は詠嘆の助動詞で、袖を濡らしてしまったことだ、の意である。
しぐる:時雨が降る。涙を流すことのたとえ
うきぐも:空に浮かぶ浮き雲に、憂き、すなわちつらい意を掛ける
あふ:動詞の連用形に付いて、すっかり…しきる
- 作者
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藤原成家
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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秋は惜し契りは待たるとにかくに 心にかかる暮れの空かな
- 次の歌
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磯隠れかきはやれども藻塩草 立ち来る波に現れやせん