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誰ゆゑかあくがれにけん雲間より
見し月影はひとりならじを

歌の意味
あなたの心はいったい誰のためにさまよい出てしまったのだろう。雲の切れ間から見た月の光は、ひとりきりではなかったでしょうに。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 751

詞書「大内にて月明かかりける夜、人々遊びけるをほのかに見て、心あくがるるよし言ひて侍りける人の返事に、遣はしける」
 内裏で月の明るかった夜、人々が管弦の遊びをしているのをほのかに見て、心がさまよい出てしまったと言ってよこした人への返事として贈った歌である。誰のために心がさまよい出たのだろう、雲間から見た月の光はひとりではなかったでしょうに、と詠む。月影に宮中の女房たちをたとえ、大勢いた中で誰に心を奪われたのかと、相手の言葉を軽くいなしながら問い返している。
 作者の「殷富門院尾張」は殷富門院亮子内親王に仕えた女房である。経歴の詳細は多く伝わらない。

 初句「誰ゆゑか」の「か」は疑問の係助詞で、二句の「けん」と係り結びをなす。誰のために、の意である。
 二句「あくがれにけん」の「あくがる」は心が体から離れてさまよい出る意で、「けん」は過去推量の助動詞「けむ」の連体形である。さまよい出てしまったのだろう、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「雲間より」は、雲の切れ間から、の意で、詞書の「ほのかに見て」を受ける。
 四句「見し月影は」の「月影」は月の光で、管弦の遊びをしていた宮中の人々をたとえる。
 結句「ひとりならじを」の「じ」は打消し推量の助動詞、「を」は逆接の詠嘆で、ひとりではなかったでしょうに、の意である。

あくがる:心が体から離れてさまよい出る
おほうち:内裏
つきかげ:月の光
作者
尾張
出典
千載和歌集
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契り置くその言の葉に身を変へて 後の世にだに逢ひ見てしかな
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