恨めしや結ぼほれたる下紐の
とけぬや何の心なるらん
- 歌の意味
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恨めしいことだ。固く結ばれたままの下紐が解けないように、打ち解けてくれないのは、いったいどういう心なのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 785
詞書「枇杷殿の皇太后宮に参りて侍りけるに、弁乳母の袴の腰の出でたるを、御前なる硯を引き寄せて、その腰に書きつけて侍りける」
枇杷殿の皇太后宮のもとに参上した時、弁乳母の袴の腰紐がのぞいていたのを見て、御前の硯を引き寄せ、その腰に書きつけた歌である。恨めしいことだ、結ぼれた下紐が解けないのはどういう心なのか、と詠む。下紐が解けるのは人に恋されている兆しという俗信を踏まえ、紐が解けないのを、心を許さない相手の心になぞらえた戯れの歌である。
作者の「宇治前太政大臣」は藤原頼通である。藤原道長の長男で、摂政、関白を務めて太政大臣に至った。宇治の別業を平等院としたことから宇治殿と呼ばれた。詞書の「枇杷殿の皇太后宮」は頼通の妹で三条天皇の中宮であった藤原妍子である。
本歌と次歌の第七百八十六首は贈答で、下紐が解けないことをめぐって、贈る側と返す側とで、解けない理由を押しつけ合う構図をなしている。
初句「恨めしや」の「や」は詠嘆の間投助詞で、恨めしいことだ、の意である。ここで句切れとなる。
二句「結ぼほれたる」の「結ぼほる」は、紐が固く結ばれてもつれる意である。次歌の結句「むすぼほるらん」もこの語を受ける。
三句「下紐の」の「下紐」は下袴や下着の紐で、袴の腰紐を指す。人に恋されると下紐が自然に解けるという俗信を踏まえる。
四句「とけぬや何の」の「とけ」は、紐が「解け」る意と、心が「打ち解け」る意を掛ける。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
結句「心なるらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、「や」の結びとなる。どういう心なのだろうか、と相手の心を問う。
したひも:下袴や下着の紐
むすぼほる:紐などが固く結ばれてもつれる
とく:紐が「解く」意に、心が「打ち解く」意を掛ける
- 作者
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藤原頼通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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七夕に貸しつと思ひし逢ふことを その夜なき名の立ちにけるかな
- 次の歌
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下紐は人の恋ふるに解くなれば 誰がつらきにか結ぼほるらん