七夕に貸しつと思ひし逢ふことを
その夜なき名の立ちにけるかな
- 歌の意味
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七夕の夜の逢瀬は織女星に貸してやったと思っていたのに、その夜に、身に覚えのない浮き名が立ってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 784
詞書「文月の七日の夜、大納言朝光もの言ひ侍りけるを、又の日心あるさまに人の言ひ侍りければ、遣はしける」
七月七日の夜、大納言藤原朝光と語り合ったのを、翌日、二人の間に仲があるように人が噂したので、朝光に贈った歌である。逢うことは七夕の織女に貸してやったと思っていたのに、その夜に無実の浮き名が立ってしまった、と詠む。年に一度の七夕の夜の逢瀬は星に譲り、自分は逢ってなどいないのに、という機知によって、根拠のない噂への困惑を軽やかに表している。
作者の「小大君」は三条天皇が東宮であった時に仕えた女蔵人で、左近とも呼ばれた。三十六歌仙の一人である。詞書の「大納言朝光」は関白藤原兼通の子の藤原朝光で、大納言に至った。
初句「七夕に」の「七夕」は、牽牛星と年に一度逢う織女星を指す。詞書の「文月の七日の夜」を受ける。
二句「貸しつと思ひし」の「つ」は完了の助動詞、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、貸してしまったと思っていた、の意である。七夕の夜の逢瀬は星に譲ったとする機知である。
三句「逢ふことを」は、逢瀬というものを、の意で、二句の「貸しつ」の対象を示す。
四句「その夜なき名の」の「なき名」は根拠のない噂、無実の浮き名である。「その夜」は詞書の七月七日の夜を指す。
結句「立ちにけるかな」の「に」は完了、「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、立ってしまったことだ、の意である。「名の立つ」で噂が広まることをいう。
なきな:根拠のない噂、無実の浮き名
ものいふ:言葉を交わす、親しく語り合う
たなばた:織女星
- 作者
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小大君
- 出典
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千載和歌集
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やはらかに寝る夜もなくて別れぬる 夜々の手枕いつか忘れん
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恨めしや結ぼほれたる下紐の とけぬや何の心なるらん