やはらかに寝る夜もなくて別れぬる
夜々の手枕いつか忘れん
- 歌の意味
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くつろいでゆっくり寝る夜もないまま、慌ただしく別れてしまった、幾夜もの手枕を、いつ忘れることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 783
詞書は前の歌に続き「題しらず」
くつろいで寝る夜もなく別れてしまった、幾夜もの手枕をいつ忘れようか、と詠む。人目を忍ぶ逢瀬は、ゆっくりと共寝することもかなわず、いつも慌ただしい別れに終わったが、それゆえにかえって、交わした手枕の一夜一夜が忘れがたいという心を表している。
作者の「藤原長能」は藤原倫寧の子である。「蜻蛉日記」の作者である藤原道綱母の弟にあたり、花山院の歌壇で活躍した。能因の和歌の師とされ、中古三十六歌仙の一人である。
前歌は手紙を形見にもするまいと忘れようとしたが、本歌は手枕をいつ忘れようかと、忘れられない側に転じている。前々歌の「忘られず」から、忘れまいとする心と忘れられない心とが交互に置かれている。
初句「やはらかに」は、くつろいで、ゆったりと、の意である。
二句「寝る夜もなくて」は、くつろいで寝る夜もなくて、の意で、人目を忍ぶ慌ただしい逢瀬であったことを示す。
三句「別れぬる」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、別れてしまった、の意である。
四句「夜々の手枕」の「夜々」は幾夜も、「手枕」は腕を枕にして共寝することである。一夜ごとの逢瀬の記憶をいう。
結句「いつか忘れん」の「か」は反語、「ん」は推量の助動詞「む」の連体形で、いつ忘れようか、いや忘れはしない、の意である。前歌の結句「形見ともせじ」と反転した構図をなす。
たまくら:腕を枕にすること。また、共寝
よよ:幾夜も
- 作者
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藤原長能
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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つれもなくなりぬる人の玉章を 憂き思ひ出の形見ともせじ
- 次の歌
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七夕に貸しつと思ひし逢ふことを その夜なき名の立ちにけるかな