袖ひちて我が手にむすぶ水の面に
天つ星合の空を見るかな
- 歌の意味
-
袖を濡らして自分の手に掬った水の面に、天の星合の空を見ることだ。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 316
詞書「花山院御時、七夕の歌つかうまつりけるに」
七夕の四首目である。手に掬った水に星の逢う空を映して見る。詞書によれば花山天皇の御代に七夕の歌を詠進した折の一首である。
作者の藤原長能(生没年未詳)は平安時代中期の歌人である。藤原能因の和歌の師にあたると伝えられる。
場面は七月七日の夜、場所は特定されない。
直接の契機は七夕の歌の詠進である。
本歌は紀貫之の「袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ」(『古今和歌集』春上)である。巻第一の第七首の西行歌の解説でも触れた歌で、手で水を掬う場面がそこから受け継がれている。
初句「袖ひちて」は、袖を濡らして、の意である。本歌の初句をそのまま用いた部分である。
二句「我が手にむすぶ」の「結ぶ」は手で水を掬うことをいう。これも本歌の語であり、巻第三の第二百五十八首の慈円歌でも同じ場面が詠まれていた。
三句「水の面に」で、掬った水の表面が示される。前歌が池という大きな水面であったのに対し、こちらは手のひらに収まるほどの小さな水面である。
四句「天つ星合の」の「天つ」は天の、の意である。
結句「空を見るかな」は「かな」の詠嘆で結ばれる。手の中の水に空全体が映るという、大小の対比が一首の眼目である。本歌が春の水の凍結を詠んだのに対し、この歌は秋の水に星を映しており、同じ動作が季節を替えて用いられている。
ひつ:濡れる
むすぶ:手で水を掬う
あまつ:天の
- 作者
-
藤原長能
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-