つれもなくなりぬる人の玉章を
憂き思ひ出の形見ともせじ
- 歌の意味
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すっかりつれなくなってしまった人の手紙を、つらい思い出のよすがとなる形見にもするまい。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 782
詞書は前の歌に続き「題しらず」
つれなくなってしまった人の手紙を、つらい思い出の形見にもするまい、と詠む。かつて交わした手紙は、心変わりした今となってはつらさを呼び起こすものでしかなく、それを形見として手もとに残すことすら拒もうとする、思い切ろうとする心を表している。
作者の「藤原長能」は藤原倫寧の子である。「蜻蛉日記」の作者である藤原道綱母の弟にあたり、花山院の歌壇で活躍した。能因の和歌の師とされ、中古三十六歌仙の一人である。
前歌は忘れられずに嘆く歌であったが、本歌は相手の手紙を形見にもするまいと、忘れようとする側から詠まれており、二首で忘れられない心と忘れようとする心とが並んでいる。
初句「つれもなく」は、相手が冷淡で、思いやりがない、の意である。
二句「なりぬる人の」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、つれなくなってしまった人の、の意である。もとは情けのあった相手であることを含む。
三句「玉章を」の「玉章」は手紙の美称で、かつて交わした恋文を指す。
四句「憂き思ひ出の」は、つらい思い出の、の意である。手紙が今はつらさを呼び起こすものであることを示す。
結句「形見ともせじ」の「じ」は打消意志の助動詞で、形見にもするまい、の意である。前歌の四句「かく忘られず」に対し、忘れようとする意志を示す。
たまづさ:手紙
かたみ:思い出のよすがとなる品
- 作者
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藤原長能
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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知らじかし思ひも出でぬ心には かく忘られず我嘆くとも
- 次の歌
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やはらかに寝る夜もなくて別れぬる 夜々の手枕いつか忘れん