古典和歌stream

都にも人や待つらん石山の
峰に残れる秋の夜の月

歌の意味
都でも、人がこの月を待っているだろうか。私が見ている、石山の峰に残っている秋の夜の月を。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1514

詞書「石山に詣で侍りて、月を見てよみ侍りける」
 月に人を思う一連の一首目である。石山の峰に残る秋の夜の月を見ながら、都でも人がこの月を待っているだろうかと思いやる。詞書によれば、石山寺に参詣して月を見て詠んだ歌である。
 作者の「藤原長能」は、藤原倫寧の子である。花山院に仕えた歌人で、『蜻蛉日記』の作者の弟にあたる。
 石山は、近江の石山寺をいう。観音の霊場として参詣が盛んで、瀬田川に臨む月の名所としても知られた。

 初句「都にも」は、自分のいる石山に対して、都の地を示す。
 二句「人や待つらん」は、係助詞「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びである。都の人を思いやり、ここで二句切れとなる。
 三句「石山の」は、参詣した石山寺の山を示す。
 四句「峰に残れる」は、峰に残っている、の意で、「る」は存続の助動詞である。夜が更けても峰にかかる月を示す。
 結句「秋の夜の月」は体言止めである。前の一連が宮中の月をしのんだのに対し、旅先の月から都の人を思う歌へと移り、ここから月に人を思う歌が続く。

まうづ:社寺に参詣する
作者
藤原長能
出典
新古今和歌集
前の歌
憂き身世にながらへばなほ思ひ出でよ 袂に契る有明の月
次の歌
淡路にてあはとはるかに見し月の 近き今宵は所からかも