憂き身世にながらへばなほ思ひ出でよ
袂に契る有明の月
- 歌の意味
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このつらい身がこの世に生きながらえたならば、やはり思い出してくれ。今こうして私の袂に宿って契りを結ぶ有明の月よ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1513
詞書「月前述懐といへる心をよめる」
月に昔を思う一連の五首目で、この一連の終わりの歌である。このつらい身が生きながらえたならば、今夜袂に宿って契りを結ぶ有明の月よ、なお思い出してくれと詠む。詞書によれば、月前述懐の題で詠まれた歌である。
作者の「藤原経通朝臣」は、平安時代の官人である。
月前述懐は、月を前にしてわが身の思いを述べるという題である。
初句「憂き身世に」は字余りの句で、つらいわが身がこの世に、の意である。
二句「ながらへばなほ」は、生きながらえたならば、やはり、の意である。先の見えない身の上を思う。
三句「思ひ出でよ」は命令形で、思い出してくれ、の意となり、ここで三句切れとなる。前の歌々が月を忘れないと詠んだのに対し、ここでは月の方に思い出すことを求めている。
四句「袂に契る」は、涙に濡れた袂に月が宿ることを、月と契りを結ぶことに見立てている。
結句「有明の月」は体言止めで、呼びかけである。夜明けまで残る月に、後の世までの約束を託し、宮中の月をしのぶ一連を述懐で結んでいる。
ながらふ:生きながらえる
ちぎる:約束する。契りを結ぶ
- 作者
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藤原経通
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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昔見し雲居をめぐる秋の月 今いくとせか袖に宿さん
- 次の歌
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都にも人や待つらん石山の 峰に残れる秋の夜の月