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昔見し雲居をめぐる秋の月
今いくとせか袖に宿さん

歌の意味
昔見た宮中の空をめぐる秋の月を、あと幾年、涙に濡れたこの袖に映して見ることだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1512

詞書「百首歌奉りし、秋歌」
 月に昔を思う一連の四首目である。昔見た宮中の空をめぐる秋の月を、あと幾年、涙の袖に映すのだろうかと詠む。詞書によれば、後鳥羽院に百首歌を奉った折の、秋の歌である。
 作者の「二条院讃岐」は、源頼政の娘である。二条天皇に仕え、のちに宜秋門院に仕えた。

 初句「昔見し」は、かつて見た、の意である。二条天皇に仕えていた昔の宮中を思い起こす。
 二句「雲居をめぐる」の「雲居」は宮中をいう。月が空をめぐることに、宮中で過ごした日々を重ねている。
 三句「秋の月」は、宮中で見た秋の月を示し、ここで三句切れとなる。前の歌々の「雲居の月」「雲の上の月」を受ける。
 四句「今いくとせか」は、あと幾年、の意で、係助詞「か」は疑問を表す。残された歳月の少なさを思う。
 結句「袖に宿さん」は、係助詞「か」を受けて連体形「ん」で結ぶ係り結びである。本巻の第千五百十首の「袖に光の宿るらん」と同じく、涙の袖に月を宿すとし、老いの身の懐旧を表している。

くもゐ:宮中。また、はるかな空
やどす:水面などに光や影を映す
作者
二条院讃岐
出典
新古今和歌集
前の歌
心には忘るる時もなかりけり 三代の昔の雲の上の月
次の歌
憂き身世にながらへばなほ思ひ出でよ 袂に契る有明の月