満つ潮に末葉を洗ふ流れ葦の
君をぞ思ふうきみしづみみ
- 歌の意味
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満ちてくる潮に葉先を洗われる流れ葦が浮いたり沈んだりするように、つらい身を浮き沈みさせながら、ひたすらあなたのことを思っている。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 792
詞書「堀河院御時、艶書の歌を上の男どもに詠ませ給うて、歌詠む女房のもとどもに遣はしけるを、大納言公実は康資王の母に遣はしけるを、又周防内侍にも遣はしけりと聞きて、そねみたる歌を送りて侍りければ、遣はしける」
堀河天皇の御代、殿上の男たちに艶書の歌を詠ませ、歌を詠む女房たちのもとへ贈らせた催しで、公実は康資王の母に贈ったが、周防内侍にも贈ったと聞いた康資王の母が妬む歌を送ってきたので、それに返した歌である。満ち潮に葉先を洗われる流れ葦のように、浮いたり沈んだりしながらあなたを思う、と詠む。潮に浮き沈みする葦に、恋に揺れ動く我が身を重ね、ほかの人ではなくあなたをこそ思っていると、妬む相手をなだめている。
作者の「大納言公実」は藤原公実である。権大納言藤原実季の子で、堀河天皇の母方の叔父にあたり、権大納言に至った。詞書の「康資王の母」は伯の母とも四条宮筑前とも呼ばれた女房歌人で、「周防内侍」は平棟仲の娘で、後冷泉天皇から堀河天皇まで内侍として仕えた女房歌人である。この催しは康和四年(1102)の堀河院艶書合である。
初句「満つ潮に」は、満ちてくる潮に、の意である。
二句「末葉を洗ふ」の「末葉」は草木の葉先で、潮が葉先を洗うさまを描く。
三句「流れ葦の」の「流れ葦」は水に流れ漂う葦で、六音の字余りである。初句からここまでが、結句の「うきみしづみみ」を導く序詞のはたらきをもつ。
四句「君をぞ思ふ」の「ぞ」は強意の係助詞で、「思ふ」と連体形で結ぶ。ほかの人ではなく、あなたをこそ思う、と妬む相手をなだめる。ここで句切れとなる。
結句「うきみしづみみ」の「み」は動作の反復を表す接尾語で、浮いたり沈んだりしながら、の意である。「うきみ」に、つらい身の意の「憂き身」を掛ける。
すゑは:草木の葉先
ながれあし:水に流れ漂う葦
うきみ:浮いたりする意の「浮きみ」に、つらい身の意の「憂き身」を掛ける
- 作者
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藤原公実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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旅衣涙の色のしるければ 露にもえこそかこたざりけり
- 次の歌
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我が恋は海人の刈る藻に乱れつつ 乾く時なき波の下草