笛竹のよ深き声ぞ聞こゆなる
岸の松風吹きや添ふらん
- 歌の意味
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笛竹の、夜更けの深い音色が聞こえてくる。岸の松風が吹き添っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 960
詞書「上東門院入内の時の御屏風に、松ある家に笛吹き遊びしたる人ある所を詠み侍りける」
彰子が一条天皇のもとに入内した時の屏風に、松のある家で笛を吹いて遊ぶ人のいる場面が描かれており、それを詠んだ屏風歌である。笛の夜更けの深い音色が聞こえてくる、岸の松風が吹き添っているのだろうか、と詠む。絵の中の笛の音に松風の音を重ね、目に見える絵から耳に聞こえる音の世界を立ち上げている。
作者の「大納言斉信」は太政大臣藤原為光の子である。一条天皇の時代に活躍し、のちに大納言にのぼった。藤原公任、源俊賢、藤原行成とともに一条朝の四納言と称された。
前歌の第九百五十九首が彰子の催した賀の歌であるのに続き、本歌も彰子の入内に関わる歌で、上東門院ゆかりの歌が並ぶ。また前歌の「谷の松」に対し、本歌は「岸の松風」を詠み、松の景物を受け継いでいる。なお本文の四句は「岸の松風」とあり、読み仮名の行の「みねのまつかせ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「笛竹の」は、竹で作った笛の、の意である。「笛竹」の「よ」は竹の節を意味し、二句の「よ」に掛かっていく。
二句「よ深き声ぞ」の「よ」は、竹の節の意と夜の意を掛ける掛詞で、夜更けの深い音色の意となる。「ぞ」は強意の係助詞で、三句の「なる」で結ぶ。
三句「聞こゆなる」の「なる」は伝聞推定の助動詞「なり」の連体形で、聞こえてくるようだ、の意である。ここで句切れとなる。
四句「岸の松風」は、岸辺の松を吹く風である。前歌の第九百五十九首の四句「谷の松とや」と松を共有する。
結句「吹きや添ふらん」の「吹き」は、笛を吹くことと風が吹くことを重ねた縁語的な表現である。「や」は疑問の係助詞、「らん」は現在推量の助動詞で、吹き添っているのだろうか、の意である。
ふえたけ:竹で作った笛
よ:竹の節の意と、夜の意を掛ける
じゆだい:后となる人が正式に内裏に入ること
そふ:加わる、付け加わる
- 作者
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藤原斉信
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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数へ知る人なかりせば奥山の 谷の松とや年を積ままし
- 次の歌
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うは氷あはに結べるひもなれば かざすひかげにゆるぶばかりを