大井川戸無瀬の滝に身を投げて
はやくと人に言はせてしかな
- 歌の意味
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大井川の戸無瀬の滝に身を投げて、「早くも世を去ってしまった」と、人に言わせてみたいものだ。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1143
詞書「題知らず」
大井川の戸無瀬の滝に身を投げて、早くも死んだと人に言わせたいものだ、と詠む。流れの速い戸無瀬の滝に身を投げ、その流れのようにたちまちこの世を去ってしまったと、人々に言われてみたいと言う。つらい世に長らえるよりも、潔くこの世を去りたいという、世を厭う思いの激しさを、名所の滝に託して詠んでいる。「はやく」には、たちまち世を去る意に、滝の流れの速さが響いている。
作者の「空人法師」は平安時代後期の僧で、伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千百二十四首が火葬の煙となる夕べを待つと詠むのと同じく、この世を去ることを思う歌である。次歌の第千百四十四首も、死後の身を思う歌である。
初句「大井川」は、山城国の嵐山の麓を流れる川で、歌枕である。
二句「戸無瀬の滝に」は、大井川の上流にあった滝に、の意である。
三句「身を投げて」は、身を投げて、の意である。
四句「はやくと人に」の「はやく」は、早くも世を去ったと、の意で、滝の流れの速さを響かせている。
結句「言はせてしかな」の「てしかな」は自己の願望を表す終助詞で、言わせてみたいものだ、の意である。
おほゐがは:山城国の嵐山の麓を流れる川
となせのたき:大井川の上流にあった滝
- 作者
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空人
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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今はとてかきなすことの果ての緒に 心細くもなりまさるかな
- 次の歌
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鳥辺山君尋ぬとも朽ち果てて 苔の下には答へざらまし