氷ゐし志賀の唐崎うちとけて
さざ波寄する春風ぞ吹く
- 歌の意味
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冬の間氷が張っていた志賀の唐崎も、すっかり氷が解けて、さざ波を岸に寄せる春風が吹いている。
- 鑑賞
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巻第一 春歌 1
詞花和歌集の巻頭を飾る立春の歌である。冬の間凍りついていた琵琶湖の志賀の唐崎の氷が解け、春風がさざ波を寄せる情景によって、春の訪れを大きく明るい景色の中にとらえている。
『礼記』月令の「東風凍を解く」という季節の考え方を踏まえ、それを近江の歌枕の景に移した歌とされる。勅撰集の巻頭にふさわしい、格調の高い一首である。
初句「氷ゐし」は、氷が張っていたという過去の状態を示し、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。冬の景から歌を始め、巻頭歌として季節の移り変わりを印象づけている。
二句「志賀の唐崎」は、琵琶湖西岸の歌枕である。「さざなみの志賀の唐崎」と詠まれてきた地名で、四句の「さざ波」と呼応している。
三句「うちとけて」は、氷が解ける意で、初句の「氷ゐし」と対応する。ここで冬から春への転換が示される。
四句「さざ波寄する」は、氷が解けて動き出した湖面の様子である。「さざ波」は志賀にかかる枕詞「ささなみの」を思わせ、地名と景物が響き合う。
結句「春風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結ぶ係り結びである。巻末の第五十首が春を惜しむ歌で閉じられるのに対し、巻頭は春風の到来を告げて始まる。
からさき:琵琶湖西岸、現在の大津市唐崎の地。古来の歌枕
うちとく:氷などが解ける
- 作者
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大江匡房
- 出典
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詞花和歌集
- 次の歌
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昨日かも霰降りしは信楽の 外山の霞春めきにけり